怖い「いきなりエイズ」
あなたは「いきなりエイズ」をご存知ですか?日本ではHIV感染者の約3人に1人が「いきなりエイズ」状態です。
ここでは、「いきなりエイズ」の4項目について、順を追って説明していきます。
1.「いきなりエイズ」とは何か?
2.「いきなりエイズ」の問題点
3.「いきなりエイズ」の発症状況
4.「いきなりエイズ」の予防法
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1.「いきなりエイズ」とは何か?
試しにネット検索で「いきなりエイズ」を調べて見て下さい。私がgoogleで検索したところ、約15万件がヒットしました。「いきなりエイズ」と言う表現はかなり普及している気がします。すでに3年ほど前から、厚生労働省の正式文書にも使われています。(それ以前にもあるかも知れません)
その意味は、次のようなものです。
HIVに感染した人が、自分の感染に気がつかず、何も治療を受けずにどんどん免疫力が低下し、身体の異変に気が付き病院で見てもらったら、「エイズを発症しています」と診断される場合を言います。つまり、HIV感染と言うエイズ発症前の状態を知らずに飛び越えて、文字通り「いきなりエイズ」を発症、告知されることを言うのです。
では、なぜ、「いきなりエイズ」は起きるのでしょうか?
あなたもご存知のように、私たちがHIVに感染しても初期に風邪に似た症状が出る程度で、ほとんど自覚症状がありません。その初期の風邪に似た症状を、HIV急性感染症と言いますが、感染者全員に出る訳でもありません。全く何も自覚症状がない人も多くいます。
つまり、「あ!HIVに感染してしまった!」などと、感染直後に自分で分かることはないのです。風邪をひいて咳やくしゃみが出たり、熱が出たりして気が付くような訳にはいかないのです。
このように、HIVは感染しても自覚症状が出ないまま、長い潜伏期間に入ってしまいます。感染した人によっても違いますが、5年から10年、もっと長い潜伏期間の人もいます。この間、自分では感染していると分かりません。
しかし、身体の中ではHIVがどんどん増殖していきます。反対に免疫細胞は破壊されて減っていきます。そして、ついに長い潜伏期間の末にエイズを発症するのです。
私たちが、エイズ発症前にHIVに感染していることを知るのは、HIV検査で陽性判定が出たときです。また、HIVに感染していないことを知るのは陰性判定が出たときです。検査を受ける以外に、HIV感染の有無は分かりません。
従って、なぜ「いきなりエイズ」が発生するかと言えば、HIV感染の可能性のある人が、HIV検査を受けていないからです。検査を受ける以外に感染の有無を知る方法がないのですから、この理由しかありません。
HIV検査を受けない理由は色々とあるでしょう。「私は絶対に感染していない。」根拠のない自信、思い込みで受けない人もいるでしょう。逆に、「自分は感染している可能性が高い、だから検査結果が怖くて受けられない・・・」こう思う人もいるでしょう。
実は私自身も後者でした。何ヶ月も決心がつかずに迷いました。「もしも、陽性だったら・・・」その不安と怖さに保健所へ行けなかったのです。このパターンは、HIVやエイズに付いて、正しい知識が不足している人に起きるパターンだと思います。当時の私がまさにそうでした。エイズは死の病気だと思い込んでいました。
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2.「いきなりエイズ」は何が問題か?
さて、こうして発生する「いきなりエイズ」ですが、何が問題となるのでしょうか。当然ながら、真っ先に問題となるのは感染者本人の治療が開始出来ないことです。
かつては死の病であったエイズですが、現在ではいい薬、いい治療法が見つかって死ぬことはなくなりました。HIVに感染しても、体内のHIVをコントロール出来るようになったのです。1997年ごろから始まったHAARTと呼ばれる抗HIV療法により、エイズ発症を抑えることが出来るのです。
しかし、それも早期発見、早期治療が出来ればの話です。病気はどんな病気でもまずは早期発見が一番大事であり、HIVも同じです。「いきなりエイズ」では、すでに免疫力が低下してエイズを発症している訳ですから、ここからの治療がより困難なのは当然です。
国立国際医療センターの調べでは、いきなりエイズ発症前に治療を開始した場合、HIV感染120週後の生存確率は99%なのに対し、いきなりエイズ発症後に治療を始めた場合は80%まで下がるそうです。もしもあなたがHIVに感染したなら、早期発見があなたの命を救います。
もう一つの問題として、二次感染の拡大があります。自分がHIVに感染していることに気が付いてないのですから、他の人にうつしてしまう可能性があります。他の人に感染させない、自分も感染しない性行為を、セーファーセックスと呼びます。そういった配慮は当然ながら、自分がHIVに感染していると知っている人の方がより強いはずです。
自分はHIVに感染してしまったけど、妻や夫、恋人にはうつしてはいけない、そう思うのが当然です。でも、自分が感染していることに気が付かなければ、場合によってはセーファーセックスではない行為もあるかも知れません。こうして二次感染がどんどんと広がっていく可能性があるのです。
ちなみに、HIV感染を知って治療を受けている人と、知らずに治療を受けていない感染者が同じようにセーファーセックスを行ったとしても、その感染リスクには差があります。治療を受けている人の方が安全なのです。
何故なら、抗HIV治療によって体内のHIVが抑えられているからです。HIVはエイズ発症までの潜伏期間でも感染者の体内で増殖を続けています。何も治療を受けなければ、どんどん増えていくだけです。当然ながら、体液の中に含まれるHIVの量も増えます。これは、感染のリスクが高くなることを意味します。
「いきなりエイズ」は、本人の健康に深刻な問題を引き起こすと同時に、妻や夫、恋人など大事な人にもHIVをうつしてしまう可能性を高めてしまうのです。
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3.「いきなりエイズ」の発症状況
それでは、現在の日本でどのくらい「いきなりエイズ」が発症しているのか、データを見てみましょう。まずは、下のグラフを見て下さい。エイズ動向委員会から発表された、平成11年から、平成21年までの、新規HIV感染者、新規エイズ患者の報告件数と、「いきなりエイズ」の発症率をグラフ化したものです。
ここでの新規エイズ患者とは、ほぼ「いきなりエイズ」と同じ意味になります。なぜなら、新規HIV感染者と、新規エイズ患者とは重複しないようにカウントされているからです。エイズ発症前にHIVに感染していることが分かっている患者が、エイズを発症しても新規エイズ患者にはカウントしていません。
つまり、ここでの新規エイズ患者とは、HIV感染を飛び越して「いきなりエイズ」を発症した件数となります。それゆえ、グラフの中では「患者発生率」と表記していますが、これは「いきなりエイズ」患者の発生率を意味しています。
このグラフを見てお分かり頂けると思いますが、HIV感染者、エイズ患者が増える中、「いきなりエイズ」発症率は年々低下傾向にありました。平成21年になって、発症率が上がっています。
平成20年 27.7%⇒平成21年 29.4%
これは、HIVに感染しているのに気が付かない人、つまりHIV検査を受けてない人が増加していることを表しています。むろん、感染者そのものも増えている可能性は大です。結果、HIVに感染した人の約3人に1人は「いきなりエイズ」と言うことです。
では、もうひとつデータをご覧頂きましょう。下の表を見て下さい。
| ブロック | ① 新規HIV感染者報告件数 | ②新規エイズ患者報告件数 | ③いきなりエイズ発症率(②÷(①+②)) |
| 北海道・東北 | 37 | 26 | 41.3% |
| 関東・甲信越 | 159 | 107 | 40.2% |
| 東京 | 447 | 96 | 17.7% |
| 東海 | 98 | 65 | 39.9% |
| 北陸 | 11 | 6 | 35.3% |
| 近畿 | 251 | 74 | 22.8% |
| 中国・四国 | 54 | 24 | 30.8% |
| 九州 | 69 | 33 | 32.4% |
| 合計 | 1,126 | 431 | 27.7% |
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このデータも同じくエイズ動向委員会から発表された、平成20年の実績データです。日本全国を表中の8つのブロックに分けて、それぞれのHIV感染者、エイズ患者、「いきなりエイズ」発症率を調べたものです。
表をご覧になって、いかがでしょうか?ちょっと意外な気がしませんか?
そう、HIV感染者が断トツに多く報告されている東京ブロックが一番「いきなりエイズ」発症率が低いのです。何となくイメージとしては、大都会の方が「いきなりエイズ」が多いような気がしませんでしたか?
考えてみると、HIV感染者が多いと言うことは、それだけHIV検査を受けている人も多い訳で、その分「いきいなりエイズ」を発症する人は少ないのですね。
実際、「いきなりエイズ」の傾向としては、大都会よりも、その周辺で多く発症しています。2007年に厚生労働省が行った調査によると、愛知県では、名古屋市の発症率が22.6%なのに対して、名古屋市以外では42.3%でした。大阪府では、大阪市の発症率が8.6%に対して、大阪市以外では54.2%で す。また、北海道では札幌市が27.3%なのに対して、札幌市以外では83.3%にも達しています。
むろん、全ての都道府県で同様な傾向が見られる訳ではなく、例外もあります。埼玉県では、さいたま市が66.7%で、さいたま市以外が46.7%で した。しかし、概ね傾向としては都心部よりも、その周辺に「いきなりエイズ」が多く発症しています。
その理由については、専門機関の間で色々と分析がされているようですが、大きくは2つの理由があるようです。
理由その1⇒ 都心部の方がHIV検査を受けやすい。
これは確かにありそうです。地方では地理的な条件で、HIV検査を受けに行くのが面倒だとか、検査の実施日が少なくて時間的都合を合わせるのが難しいなど の理由です。
また、地方の保健所では、狭い人間関係から検査を受けることをためらう人もいます。顔見知りに会うのが嫌、など。
理由その2⇒HIVやエイズに対する危機感の欠如
地方でのどかな環境に住んでいると、HIVやエイズは他人事、別世界のお話で自分の身近なリスクとして感じていないのではないか、と言う分析もあります。 「いきなりエイズ」を発症した患者は皆、口を揃えてこう言うそうです。
「まさか自分がエイズなんて・・・・」
そう思うがゆえに、HIV検査を受けることを思いつきません。根拠のない自信、安心感が検査を受けさせないのです。しかし、今やHIVは特別な性行為、特別な職業、特別な地域の感染症ではありません。ごくごく普通の私たちの身近な感染症なのです。いつ感染しても不思議ではありません。
地方都市だから、田舎だから・・・関係ありません。地方でも田舎でも、感染はします。その点、大都会に暮らしている人のほうが、よりHIV感染のリスクを身近に感じてHIV検査を受けようと思うのかも知れません。
以上、2つのデータから言えることは、日本においてはHIV感染者の3人に1人近くが「いきなりエイズ」を発症しており、都会よりもその周辺地域の方が発症率が高い、と言う事実です。
それでは、あなたご自身、そしてあなたの周囲の家族やお友達、恋人はどうでしょうか。もしかしたら、自分もHIVに感染しているかも知れないと、HIV検査を受ける雰囲気、空気があるでしょうか。はっきり言って、管理人の住む地方都市では皆無に近いような気がします。
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4.「いきなりエイズ」の予防法
さて、それでは最後に、「いきなりエイズ」の予防法についてお話したいと思います。残念ながら、予防法はいくつも選択肢がありません。たった一つだけ、HIV検査を受けることです。
エイズの治療・研究を行っている、国立国際医療センター戸山病院(現・独立行政法人 国立国際医療研究センター病院)の本田医師は、asahi.comのリレーエッセイの中で次のように書かれています。
『HIVに感染しても、「あ、HIVに感染した」とわたしたちが気づくことはほとんどありません。HIVに感染しているかどうかは血液検査を受けなければわかりません。まだ何の症状もないときに、「自分はHIVに感染していないだろうか」と考えて検査を受ける、というのが理想的です。
どなたかと一度でも性的な接触があれば、HIV検査を受ける十分な理由があります。お近くの保健所でぜひ、検査をお受けになってみてください。』
本田医師のところで見つかった「いきなりエイズ」の患者は、皆さん口をそろえて、「まさか自分が・・・思ってもみなかった。」と言うそうです。HIVやエイズを知っていても、どこか遠い世界の自分には無関係な病気だと思っていたのです。
とにもかくにも、あなたに感染の可能性がある行為の心当たりがあれば、出来るだけ早くHIV検査を受けることをお勧めします。誰が何と言おうと、どこに何が書かれていようと、HIV感染は検査を受ける以外に絶対に分かりません。
ましてや、根拠のない自信、安心感は何の役にも立たません。どうか、あなたは「いきなりエイズ」の前に検査を受けて下さい。
もしもあなたが、保健所の対面検査が嫌だとか、検査に行く時間的余裕がなくて検査をためらっているのなら、どうぞHIV検査キットも検討してみてください。2008年には4万5000人が利用しています。自宅で誰にも知られず、自分の都合に合わせて検査が出来ます。HIV検査は何よりいきなりエイズ発症前に行うことが大事です。
*私が使用したHIV検査キットはこちらです*
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