成人T細胞白血病で、漫才師の正司玲児(しょうじ・ れいじ=本名・及川玲児)さんが10日午前10時32分大阪府羽曳野市の病院で亡くなりました。71歳でした。

若い人はあまり知らないでしょうが、正司玲児さんは元妻の正司敏江さんと「正司敏江・玲児」と言う漫才コンビで活躍していました。売りとしていたの は元夫婦の味を生かした「どつき漫才」です。今では全く見られなくなった「どつき漫才」ですが、1960年代、70年代にはけっこう人気がありました。

死因となった成人T細胞白血病ですが、これは非常に地域性のある病気で九州に感染者が多くいます。病原菌はヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型と言い、 Human T-Lymphotropic Virus type Ⅰを略してHTLV-1と呼びます。正司玲児さんの出身は九州の大分県でした。

この成人T細胞白血病は、感染しても誰でもが発症する訳ではありません。病原菌を持ったまま発症しない、いわるゆキャリアと呼ばれる人は100万人 いるとも言われています。そして年間の発症者は約700人ほどです。ほとんどの人は感染しても生涯発症しないまま寿命を迎えます。発症する場合でも潜伏期 間は非常に長く、60代、70代での患者が最も多いそうです。

HTLV-1の感染ルートは3つあって、性行為感染、母子感染、血液感染です。性行為の場合、詳しい理由は知りませんが男性から女性への感染が主 で、その逆はないそうです。

血液感染を防ぐため、献血で集めた血液はHIVなどと同じようにHTLV-1も検査されます。ただ、HIVと違って、HTLV-1は感染が見つかる と本人へ知らせてくれます。(本人希望の場合のみ)HIVが教えないのとは対照的です。

母子感染は、母親の母乳によって赤ちゃんに感染します。従って妊婦は必ずHTLV-1の検査を受けることが必要です。

成人T細胞白血病は、リンパ節が腫れたり、肝臓、脾臓が腫れます。HTLV-Ⅰに感染したT細胞(免疫細胞の一種)が、血液やリンパ液によっ て全身の臓器に広がっていきます。そして、免疫細胞がウイルスによって破壊されるため、最終的には免疫不全による日和見感染症を発症します。発症後は非常 に致死率の高い病気です。

最初に書いたように、この病気は地域性が強いため、これまでは国を上げての対策が取られてきませんでした。どちらかと言えばは地方自治任せの対策 だったのです。

しかし、2010年12月3日、国会において成人T細胞白血病患者団体から出されていた、総合対策の請願書が衆参両院で可決されました。

請願書の内容は次の4点です。

1.全国一律の母子感染予防と国民への知識普及

2.全国的な診療体制整備と、感染者の心のケアを目的とした相談窓口の設置

3.患者の医療費軽減や新薬の薬事承認・保険適用

4.発症予防・治療法の研究開発

この4項目を国が責任を持って推進して欲しいと言うものでした。

成人T細胞白血病は地域性があるとは言え、発症した場合の生存率が極めて低いこと、また近年では九州以外でも感染者、患者が広がる傾向にあることな ど、国主導の対策が急がれるところです。